袴田事件の再審無罪に関する声明

声  明
 昨日、静岡地方裁判所 國井恒志裁判長は袴田事件の再審公判で、袴田巌さんに対し無罪判決を出した。かなり踏み込んだ内容で検察の違法な捜査を断罪したことを評価したい。
「無罪」言い渡しの後の判決文において、被告人席に座っているのは検察ではないかと錯覚するほど権力犯罪について言及した。警察・検察の取り調べの非人道性、すなわち長時間の拷問的取り調べに加え、尿意を催してもトイレに行かせず、取調室においてさせるような、尊厳を奪うやり方が許されるはずがない。
また5点の衣類とズボンの端切れは捜査機関によるねつ造と認定し、証拠から排除した。加えて検察が行った味噌漬け実験について、わざと赤みが残るような実験方法と写真撮影であり、信用できない。血液が長期間味噌に漬けられると黒くなることは明らかである、とした。
これらが証拠から排除されたことは当然であるが、なぜここまで時間がかかったのか。言うまでもなく検察が妨害した結果である。いったい犯罪者はどちらなのか、検察ではないのか。もちろん裁判所にも責任はあり、マスコミもしかり。そして問われているのはこの先の事なのだ。第2の袴田巌さんを生まないためにもいくつか提言をしたい。
① まずは再審法改正を早急に実現させる。
② 冤罪の温床である人質司法を改めるために、代用監獄の廃止。
③ 再審公判における検察の有罪立証は、二重処罰の禁止を保障した憲法39条違反であるため、これを禁止すべきである。
過去の死刑4事件が再審無罪になった時点で、これらが改正されていれば、とっくの昔に精神が蝕まれる前に袴田巌さんは自由の身となっていたはずだ。
裁判所の謝罪については「ものすごく時間がかかっていて、裁判所として本当に申し訳なく思っています」に留まった。静岡地検は「判決内容を精査した上で、適切に対処したい」としているが、控訴は絶対に許されない。
袴田事件は誤った判決で死刑になったのではなく、最初から一貫して権力犯罪のオンパレードだった。そのことで人命が奪われかねなかったこと、雪冤を果たすのに60年近くかかったことがようやく司法の手によって明らかにされた。しかし袴田さんの奪われた58年は永久に取り戻せない。ひで子さんの大事な時間も同じである。熊本典道元裁判官や、刃物店の店主は一生消えない心の傷を受けたまま亡くなられた。この犠牲を無駄にせず、仲間とともに冤罪を生まない社会に変えていくために声をあげていく。
2024年9月27日 冤罪犠牲者の会 事務局一同