名張毒ぶどう酒事件の名古屋高裁による再審請求棄却に抗議する
(写真は3月3日中日新聞夕刊)
声 明
2022年3月3日、名古屋高等裁判所 第2刑事部(鹿野伸二裁判長)は名張事件の第10次再審請求を棄却する決定を出した。
私たち冤罪犠牲者の会は、このたびの不当決定は、日本の司法には正義も真実もいらないと語ることであり、激しい憤りを感じる。
そもそも奥西勝さんは原審一審の津地方裁判所では無罪判決である。それに対して無罪判決を覆す策謀をした検察とグルになった医師の松倉豊治が、現場にあったブドウ酒瓶王冠に遺された歯型と奥西さんの歯型を倍率操作して「一致した」とする証拠捏造を行って裁判所を騙して有罪判決を掠め取ったのだ。
その証拠捏造の事実は、第5次再審請求で明らかにされたのに、検察と松倉の犯罪行為を見逃した裁判官が「自白」や証言の摘み食いで有罪を維持したのである。
この名張事件にあった警察と検察、更に裁判官の行った数々の許し難い行為の事実を知っている私たちは、そこに罪を重ねるこのたびの不当決定に抗議する。
これまで弁護団は、歯型鑑定の捏造を明らかにし、ブドウ酒は2度開封し得る手段を解明して奥西さん以外の犯行も可能だと明らかにし、更にブドウ酒封緘紙には、本来の糊以外にも市販のノリの成分を検出したとする専門家の新たな鑑定結果を弁護側が提出し、2度開封された事実を明らかにしてきた。
そこに事件発覚直後に事件を体験した人たちの調書が開示されて「ブドウ酒には封緘紙が貼ってあった」と証言していることが明らかになったことから、奥西さんが事件現場の公民館でブドウ酒の封を切って毒を入れたとする自白が成立しないことも明らかになった。これ以上に奥西さんの無実を示す証拠が必要であるのか。
証拠も事実も無視するならば裁判は成立しない。裁判官ならば、何をしても良いのか。どのような理不尽な判断をしても許されるのか。
私たち冤罪犠牲者の会は、そうは思わない。理不尽な判断をしても責任を取らないで許されるからこそ、このような裁判所の存在意義を否定するかのような判断を平気でするのだ。
長年の労苦を無視された弁護団、請求人のご苦労を思い、更に支援活動を続けられた皆さんの胸中を思うとかける言葉もありません。しかし、私たちは、このような不当決定には負けません。証拠と事実に基づく公正な無罪判決を得られるまで、皆さんと一緒に闘います。 2022年3月3日 冤罪犠牲者の会 事務局一同