声明「日本の司法は本当に冤罪をなくす気があるのか?」
大津地方裁判所が7月17日、判決を言い渡しました。滋賀県の湖東記念病院で入院患者を死亡させたとして、殺人の罪で12年間服役した元看護助手の西山美香さんが起こした国賠訴訟で、大津地裁は、西山さんが「違法な捜査によって有罪に追い込まれた」として、滋賀県に対して約3100万円の賠償を命じる一方、国に対する訴えは棄却しました。既に無罪を獲得している西山さんに対する反省もない残念な判決だと言わざるを得ません。過去の失敗に学ばないものは必ず同じ過ちを繰り返すと言います。2020年に西山さんに無罪判決を言い渡した大西裁判長(今市事件では右陪席として最悪の判決に加担)は泣きながら「司法の瑕疵を是正するために、警察、検察、法曹関係者もよりよく改革する努力をすべき」と述べたそうです。しかし、警察と検察は無罪判決の後も、「捜査は適正だった」「承服しがたい点がある」などと無礼な発言をし、特に県警本部長は滋賀県議会でも開き直りました。これに怒った国民が滋賀県庁に抗議電話の嵐。県警本部長が更迭される事態となったことを鮮明に覚えている方は多いはず。
そんなことがあったにも関わらず、大津地裁は県(県警)の責任は認めながら、国(検察)の責任は認めませんでした。こんなことをやっていたらいつまでたっても冤罪はなくなりません。西山さんは国の責任も認めることを求めて控訴を検討するとコメントしています。
そして翌日7月18日。39年前に福井市内で起きた女子中学生殺人事件の再審公判で、名古屋高等裁判所金沢支部は35年前の一審・福井地裁が出した無罪判決を支持して検察の控訴を棄却し、前川彰司さんに無罪判決を出しました。前川さんは殺人罪で7年も服役しました。事件当時から一貫して無罪を訴えてきた前川さんに対し、増田裁判長は判決を言い渡した後に「39年もの間、大変な苦労をかけてしまいました。申し訳なく思っています。事件にかかわった一裁判官として取り返しのつかないことになり、重く受け止めています。前川さんのこれからの人生に幸多からんことをお祈りしています」と謝罪しました。
ですが、この事件、前川さんの知人が「事件当日、血の付いた前川を見た」と証言していたことが有罪の根拠の1つになっていたが、なんと警察はその人物に(結婚祝いと称して)金品を贈っていたことが判明しています。また、別の知人が「アン・ルイスと吉川晃司がいやらしい踊りをしている歌番組(夜のヒットスタジオ)」を事件当日にテレビで観たと証言しました。ところがこの場面が放送されていたのは事件当日ではありませんでした。検察はそのことを知っていました。しかし、前川さんの2度目の再審請求で裁判長から強い開示勧告を受けて、検察が渋々出した証拠の中からそのことが明らかになりました。その検察が今回の無罪判決でも上告を検討しているそうです。
こんな警察と検察を信用できますか? 袴田事件で証拠をでっち上げ、大川原加工機事件では警察と地検幹部が大川原加工機株式会社に赴き、社員を前に謝罪しました。公安部長は「心よりおわび申し上げます。最高検察庁の検証に協力し、二度とこのようなことを起こさないよう努めます」と述べました。大川原社長も「二度とこういうことを起こさず、いい警察、いい検察になってほしい」と返しました。ところが謝罪すべき当事者の名前を間違えていました。プレサンス事件では取り調べ中の検察官が「検察なめるなよ」と発言したことが明らかになっています。
こんな警察・検察を信用しろと言うほうが無理な話です。「判決を真摯に受け止め、今後の操作に役立てていく」などと発言して、何事もなかったかのように冤罪づくりを続けていくのでしょうか。このような冤罪づくりの体質は、ルールで規制するしかありません。それが再審法改正です。
こんな茶番を繰り返すのはもうやめましょう! 正義はどこにあるのか、立ち止まって考えるときが来ています。
※「検察は上告するな」の署名活動にご協力ください。