ホンダ裁判判決に対する抗議声明

最高裁判所第一小法廷小池裕裁判長は、冤罪犠牲者である青木惠子さんが行った本田技研工業製作車両のガソリン漏れ欠陥によって自宅が火災被害にあい、娘さんが焼死した責任を問う裁判に対して、その訴えを棄却した。

私たち冤罪犠牲者の会は、その決定は「著しく正義に反している」ものであり、法理にも道理にも悖る判断であって、到底容認できないし、その稚拙な判断に対して強く抗議する。

青木惠子さんはホンダ車のガソリン漏れでの火災事故であるのに、警察と検察の誤った捜査で犯人にされて20年を獄中に過ごした。そして再審裁判でのガソリン発火実験などによって無実が証明されて社会に帰ったのだが、20年を獄中に過ごした責任は警察と検察だけにあるのではない。ガソリンの揮発性と発火性という科学的な事実を無視して有罪判断をした裁判所にもある。二審の裁判官らは、「ライターで火をつけて私が死んだら無実を信じてくれますか」との青木さんの訴えを退け、燃焼実験を行わずに控訴を棄却した責任は大きい。

簡単な社会常識さえあれば理解し得る科学的な事実さえも理解しない裁判所が、青木惠子さんを20年も獄中に閉じ込めたともいえるのに、その裁判所が「20年の期間が過ぎたから訴える権利はない」などと、どこから考えて言える言葉なのか、我々には理解し難い。

言うまでもなく私たちは誤った裁判による犠牲者である。被害者である青木さんが、なぜ加害者から屈辱や嘲りを受けなければならないのか。このような人間性の欠片もない判断を行う得る裁判所の存在こそ、冤罪の元凶であり、過ちを反省しないその姿勢に悔しさと憤りで胸が締め付けられる思いである。

私たち冤罪犠牲者の会は青木惠子さんが受けた最高裁裁判所小池裕裁判官以下の裁判官たちが行った決定による無念と憤りを共にして、このような裁判所の責任を問いうる法改正を行うために、更に奮闘することを誓って、強く強く最高裁判所第一小法廷に抗議するものである。