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冤罪被害者とその家族の共同声明

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無実の私たちを見捨てた、法制審は退場せよ
冤罪を救済できるのは、議員立法だけ

みなさん。私たちは、身に覚えのない罪で、有罪の判決が確定した、冤罪の当事者と家族です。

私たちは、自分が無実であることを知っています。それを裁判官にも分かってもらうことだけを願って、訴え続けています。

47年7か月、絞首台と隣り合わせで自由を奪われていた袴田巖さんが、再審で無罪となりました。何十年かかろうと、最後には正義が実現すると、私たちは再び希望を見出し、息を吹きかえす思いを味わいました。

だが同時に、再審で冤罪を晴らすには、人ひとりの人生の長さを差し出さなければならない、という重い現実もつきつけられます。

袴田さんの第1次再審請求では、27年間証拠を隠したまま請求を棄却、続く第2次請求審でようやく証拠が一部開示され、静岡地裁で開始決定が出たのも束の間、検察の抗告によって東京高裁で取り消され、再審無罪への道はさらに10年遠ざけられました。

再審公判で無罪が確定した今となっては、検察の抗告が無実の人をさらに苦しめただけの、無意味なものであったことは誰でもわかります。

この出来事は、無実の人を早期に救い出すという再審制度が、まともに機能していない現実を暴き出しました。再審を巡る議論が活発化し、一昨年3月、国会に「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(以下、「再審法議連」)が結成されました。昨年6月、6党の共同提案で、再審法改正法案(以下「議連法案」)が国会に提出されました。

議員立法の提出は、私たち冤罪被害者を、再び勇気づけました。

危険な逆走車 法制審議会の乱入

ところが 再審法議連発足から約1年後、法務省が「法制審議会-刑事法(再審関係)部会」(以下、「法制審部会」)に対し、再審法の改正について諮問しました。これまで再審に関心すら示さず「現行法でうまく行っている」とうそぶいていた法務省が、急に再審法改正を前提とした動きを見せるのは、きわめて奇異なことです。

法制審部会は、昨年4月21日を皮切りに、月2回ほどの異様な急ペースで開かれ、討議項目は事務局(検察官および検察関係者)が毎回準備し、委員の発言はひとりなんと2~3分ずつで一順して終わるという、拙速を絵に描いたような進行。何のために審議しているのか、本当に真剣に冤罪からの無実の人の救済を考えているのかさえ疑わせる審議です。

そもそも部会の人選に、各方面から多大な疑問の声があがりました。日弁連からの委員2名は、いずれも再審請求審を弁護人、裁判長として経験しているのに対し、法務省が選んだ委員は、再審について一本の論文さえ書いたこともない研究者や検察関係者ばかり。いずれも、再審法の見直しや証拠開示などについて否定的見解に終始してきた法務省のお仲間フォーメーションです。

「とりまとめ案」なる事務局作成文書等で審議を誘導するとともに、委員の事前了解もなく事務局の作成した「とりまとめ」をマスコミにリークし、法務省の方針を既成事実化する世論誘導さえ試みてきました。

その議事録をみて、私たちは言葉を失いました。

議論は多岐にわたりますが、中でも最重要かつ最大の対立項目である2項目において、法制審部会の多数派の見解と、日弁連委員との見解は、真っ向から相容れないものとなっています。

証拠開示」と、再審開始決定に対する「検察官の不服申立ての禁止」です。

検察官の抗告等による無駄な引き延ばしにあい、当事者が高齢化する(大崎事件、名張毒ぶどう酒事件、日野町事件など。後者2件では被害当事者は獄死)という現実を、議連法案は、真正面から受け止め、検察官の抗告等を「禁止する」という1行で、この弊害を解消しています。

一方、法制審部会の多数派は、「通常審(における上訴)との制度的整合性」を口実にするなど、思考停止状態から一歩も動こうとしません。

誰のための再審法か?

証拠開示について、法制審部会多数派は、開示請求ができるのは、弁護側(請求人側)が主張する新証拠に関連する証拠に限定するとしています。冗談ではない。話がまるで逆です。新証拠を見つけ出すために、証拠開示が必要なのです。

再審における証拠開示ルールが必要なのは、冤罪の人を誤った裁判から救い出し、新証拠によって無罪を獲得することが目的ではなかったでしょうか。それとも、再審を求める者が証拠にアクセスして無罪を勝ち取る新証拠を見出すことを今以上に困難にするためだったのですか?

ここで、獄中から再審請求を求め、時折は絶望感にとらわれそうになりながらも、外部支援者との文通でようやく無実を訴え続ける力をたもっている冤罪被害者Aさんの手紙から一節をご紹介します。

「これから再審をするために、検察が保管している証拠の閲覧・謄写をしようと思っても、自分ではできない。弁護士に頼んでやってもらわないといけないが、カネもものすごくかかる。」

「仮に謄写ができたとしても、刑務所の規則で、領置できる私物の量は制限されていて、裁判資料を手許におけない。

刑事訴訟法281条の4(開示証拠の目的外使用の禁止)があるから、書面を支援者や家族に宅下げして保管すらできないから、けっきょく廃棄させられる。」

新たな証拠開示どころか、裁判で開示済みの証拠や弁護側証拠へのアクセスさえ困難ななかで、無罪の手掛かりを必死で求めているのです。

「関連証拠だけを開示する」という条文ができれば、「関連しない証拠は開示しない」となります。関連するか、しないかについては、いったい誰が判断するのか?証拠を見ているのは検察官だけですから、「関連性なし」と検察官の口からひとこと出れば、それまでです。

法制審部会案は、再審における証拠開示を、いま以上に狭め、検察の証拠隠しをより堅固にするものでしかありません。

私たちの願いを反映した再審法改正を、国会の力で

私たちは、2025年度通常国会に於ける議連法案の可決をめざしてきました。この間、心をあわせてたたかってきた国会議員や法曹、市民のみなさんの力があれば、それは可能だと信じてきました。しかし、通常国会は開会早々に解散されると見られ、その場合、現在提出済みの議連法案は一端廃案となります。しかし、その条文はいささかも意義を減らすものではありません。議連法案はそのままいつでも上程可能な、私たちの願いを反映した法案です。

一方、国会解散、衆議院選挙、政党再編などを横目に見つつ、法制審部会は法務省いいなりの答申への作業を粛々とすすめ、2月上旬には、法制審総会で部会の答申が確定するとともに、内閣提出法案(閣法)として。法制審版の再審法改悪法案の国会提出が予想されます。

再審によってしか正義を実現できず、名誉と人生をかけて再審をたたかっている者の願いを逆手にとって、証拠隠しや検察官の再審妨害などを強化する改悪をこころみる法務省の悪賢いやり方に対する、私たちの怒りは小さなものではありません。

私たちは訴えます。

国会議員のみなさん。

唯一の立法府としての矜恃をもって、議員立法による再審法改正を実現してください。

裁判官、弁護士、そして心ある検察官のみなさん。

再審は、請求人だけでなく、誤りを正したいと願う法曹にとっても、不可欠の武器です。

市民のみなさん。

冤罪は、わが身に降りかかる直前までは他人事です。

どうか力をあわせて再審法改正を一日も早く実現してください。

まだ無実を信じてもらえない仲間のために

言うまでも無く、私たちの中で、裁判で無罪が確定した者をのぞいて、顔や名前を出してみなさんに話ができる者は限られています。

無実だとまだ信じてもらっていない仲間が、表に出るのは大変なことです。しかし、そういう仲間の存在こそが、実は冤罪と再審とのもっとも大きな課題なのです。私たちの声明の後ろには、私たちに数十倍、数百倍もの、声を出すことが困難な仲間がいること、彼らこそ再審法の改正、公正な裁判をもっとも切実に願っていること。今回の冤罪被害者共同声明に、あえてまだ無罪を証明できていない仲間も参加を呼びかけていることをご理解ください。

2026年1月21日

 

【呼びかけ人/賛同呼びかけ人

〈呼びかけ人(五十音順)〉12名
青木惠子(東住吉冤罪事件再審無罪確定者)
石川早智子(狭山事件第四次再審請求人、石川一雄さんの妻)
折山敏夫(遺体は誰?折山事件の再審請求人)
阪原弘次(日野町事件第二次再審請求人、阪原弘さんの長男)
櫻井恵子(布川事件再審無罪確定者・櫻井昌司さんの妻)
菅家利和(足利事件再審無罪確定者)
高瀬有史(今市事件の勝又拓哉さんの弟、再審請求準備中)
西山美香(湖東記念病院事件再審無罪確定者、冤罪犠牲者の会共同代表)
袴田ひで子(袴田事件再審無罪確定者・袴田巖さんの姉)
前川彰司(福井女子中学生殺人事件再審無罪確定者、Michael 前川彰司)
矢田部孝司(西武新宿線痴漢事件・無罪確定者、冤罪犠牲者の会共同代表)
栁澤広幸(特急あずさ窃盗事件、第二次再審請求準備中)

〈賛同呼びかけ人(五十音順)〉4名
指宿 信(成城大学教授)
片山徒有(被害者と司法を考える会代表)
周防正行(映画監督、再審法改正をめざす市民の会共同代表)
新田渉世(元日本プロボクシング協会・袴田巖支援委員会委員長)