西山美香さんの再審無罪に関する緊急声明

声明

昨日、大津地方裁判所は湖東記念病院事件と呼ばれる冤罪事件で犯人とされた西山美香さんに再審無罪判決を出しました。私たち冤罪犠牲者の会は、当然の判決であり、遅きに失した判決であるとはいえ、また1人の冤罪仲間が救われたことを、心から喜びたいと思います。

西山美香さん、おめでとうございます。ご家族の皆さん、おめでとうございます。この無罪判決を得るまで、大変なご苦労をされた弁護団の先生方、本当にお疲れさまでした。有り難うございました。また、この闘いを支えてくれた国民救援会はじめ、多くの支援者の皆さんにも感謝申し上げます。有り難うございました。

昨日の判決を読みまして、私たちは司法のあり方として警察や検察、裁判所や弁護士も含めての問題だと指摘した上、自省を込めて冤罪問題に取り組むことを呼びかけた裁判所の姿勢を歓迎します。

この「湖東記念病院事件」で西山さんの人間的弱さを利用して自白を生み出し、作り上げた山本誠警察官の責任は重大です。そして、事件ではなくて事故であるとの医師の鑑定を隠して事件に仕上げた滋賀県警にも責任がありますのに、滋賀県警は「捜査は適切であった」と開き直ります。

供述弱者である西山さんの「自白」と、その変転にある嘘を見抜けずに起訴して公判維持をした検察は、事故の可能性を言う医師の鑑定が明らかになった再審裁判でも、無罪論告もせず、詫びもせず、今回の無罪判決にも「承服しがたい点がある」と反発する始末です。

私たち冤罪犠牲者の会は、冤罪を作り上げた当事者である警察官や検察官が、何も責任を取らずに許されている日本司法のあり方こそ、日本に冤罪を作り続ける元凶であると考えています。だからこそ再審で無罪判決が出されても、それに反発したり、認めないような不遜な態度を示すのです。

医師が患者を見誤り、手足を、切り落として罪に問われないでしょうか。新聞記者が事実をねじ曲げた記事を書いて責任を問われないのでしょうか。法曹三者の弁護士でも弁護を誤れば弁護過誤の責任を追及されますのに、なぜ警察官と検察官、それに裁判官は、自らの誤りに詫びもせず、責任も取らずに存在できるのでしょうか。

何人の冤罪者が無罪判決を得たならば司法は変わるのでしょうか。変えて頂けるのでしょうか。警察の行動を監視し、検察の活動を監督する立場にもある国会と地方議会は、この事態を改革するために行動してください。冤罪を生み出す日本司法を変えるために、証拠開示や検察の控訴権問題など、冤罪を作り出す法律的欠陥を是正する行動をしてください。

私たち冤罪犠牲者の会は、今後も西山美香さんの闘いに寄り添い、責任を取れ、責任を取らせる法律を作れの声を上げて捜査や司法に関わる人の責任を問う法律制定を目指すことを誓って声明とします。

2020年 4月1日

冤罪犠牲者共同代表
青木恵子、藤山忠、矢田部孝司