西山美香さんは無罪~国家賠償請求訴訟

湖東記念病院事件で無実となった西山美香さんが国賠(国家賠償請求訴訟)を起こしました。西山さんは人工呼吸器のチューブを抜いて、患者を殺したという容疑で殺人犯の濡れ衣を着せられ、12年間服役しました。

しかし、滋賀県警は捜査の初期の段階で「人工呼吸器のチューブは故意に外されたのではなく、外れてしまったために痰が詰まって男性患者が亡くなった事故死の可能性がある」という鑑定書を持っていました。しかし、これを隠して(事故の可能性を知りながら)、西山さんを殺人の容疑で逮捕、起訴します。この鑑定書が作成されたのは逮捕の4か月前。西山さんは逮捕から数えると(20代から30代にかけての)13年もの時間を奪われたことになります。

弁護団は西山さんの供述の不自然な変遷から取調官の誘導を感じ、確たる物的証拠もないことから、事件は冤罪であると確信していました。そして西山さんは刑期を終え出所します。ところが、その後の2019年11月、再審公判の準備を進めていた弁護団に衝撃が走ります。大津地検から開示された新たな証拠を精査していた時に、男性患者の死亡が事故だった可能性に言及した滋賀県警の捜査報告書が出てきたのです。滋賀県警が15年間隠していたものです。

最初の裁判の段階で、この証拠が出ていれば、西山さんが12年もの刑務所暮らしをする必要はなかったわけです。検察はこれ以上争うことを諦め、西山さんの無罪が確定しました。その後の記者会見で、滋賀県警は「捜査は適正に行われた。違法性はなかった。」と開き直ります。西山さんへの謝罪は一切なし。

こんなことが許されるんでしょうか。日本の法律では、西山さんを殺人犯に仕立て上げた警察・検察の担当者を罰することができません。そこで、管轄する国や県を相手に国賠を起こすしかなくなります。

西山さんは記者会見で「悪いことをしたら謝るという当たり前のことを警察も検察もしない。これでは世の中だめなので追及していきたい。私を苦しめた原因が何だったのか、明らかにしないと、冤罪はなくならない」とコメントしました。彼女の国賠の目的は自身の事件を明らかにして、国家に賠償してもらうことではありません。これ以上の冤罪をうまない、ということが目的なのです。みんなのために女性がひとり立ち上がって、国家権力に対して一矢報いようとしています。この会の会員でもある西山美香さんを是非、応援してください。