「飯塚事件の再審請求に対する最高裁第一小法廷の決定に抗議する」

2019年6月の大崎事件に続いて、最高裁第一小法廷は飯塚事件の再審請求において冤罪犠牲者の願いに背く、許しがたい決定をしました。
私たち「冤罪犠牲者の会」は、このような決定こそが冤罪が際限なく繰り返される原因であると、怒りを以て抗議します。
無実の久間三千年(くまみちとし)さんが犯人にされた飯塚事件は、「東の足利事件、西の飯塚事件」と呼ばれています。警察によるDNA鑑定の不正で作られた冤罪であるという意味で、このように並び称されています。そしてあろうことか、鑑定の不備が明らかになった足利事件の再審開始が確定的になったのと時をほぼ同じくして、久間三千年さんの死刑が執行されました。
これを私たちは、死刑が確定した事件の中に冤罪があることの発覚を恐れた法務省・検察による口封じの死刑執行であり、国家による殺人だと考えています。
久間三千年さんの遺志を引き継いだご家族が行った再審請求は、当時の科捜研の稚拙なDNA鑑定を明らかにするなど、久間三千年さんが無実であることを道理に基づいて解き明かすものでした。しかし第一小法廷はDNA鑑定の不備などは認めながらも、目撃証言などの証拠を理由に再審請求を棄却しました。そもそも飯塚事件におけるDNA鑑定の「不備」は、単に誤りや技術不足といったレベルのものではありません。鑑定試料を全量消費した上に写真を改ざんするなど、久間三千年さんを意図的に犯人に仕立て上げたことが明らかになっているのです。
今回第一小法廷が「信用できる」とした目撃証言も、警察の誘導によって作られたことは明白であり、自動車を運転する者からすると常識からかけ離れたものです。さらに、事実を捻じ曲げる証拠捏造を行う警察が示した「被告車両から発見された被害者の微量の血痕」は、何を根拠に信用できるというのでしょうか。
私たち「冤罪犠牲者の会」に集う当事者の多くは、警察による証拠捏造、検察による無実の証拠隠しを体験しています。捜査の過ちを証拠捏造で補完するのが警察であり、証拠を隠して冤罪を作るのが検察であることを、私たちは誰よりもよく知っています。
一昨年の大崎事件に対する「著しく正義に反する」とした棄却決定は、この最高裁第一小法廷の言葉こそ著しく正義に反していたことが、今回の飯塚事件に対する決定によっても証明されました。
私たち「冤罪犠牲者の会」は、無実の人が犯人にされてしまう原因である、警察による証拠捏造と検察による証拠隠しを禁止する法整備を求めています。この法律が成立すれば、飯塚事件における警察と検察の悪事も必ずや明らかされるだろうと確信しています。飯塚事件で行われた警察、検察による数々の不正行為、それらの隠蔽に加担してきた裁判所を私たちは許しません。今後も久間三千年さんのご家族とともに、私たちは飯塚事件の再審が実現するまで闘い続けます。
2021年4月30日 冤罪犠牲者の会 一同