日野町事件の再審開始決定に関する声明

私たちの仲間である阪原弘さんが強盗殺人犯の濡れ衣を着せられた日野町事件に対して、大阪高等裁判所は再審開始決定を維持する決定を行いました。

日野町事件の証拠や事実関係を検討すれば、それが当然の判断とはいえ、当然が当然とされない裁判所の理不尽な判断を、何度も経験している私たちは、この決定を素直に喜んで 歓迎します。

そもそも日野町事件で犯人にされた阪原弘さんには町内での集まりに参加して酔い潰れて寝ていたアリバイがありました。それゆえに準備した逮捕状が失効したのですが、その間に警察はアリバイ潰しを行いました。その経過の果てに警察は阪原さんに自白を強要して犯人にでっち上げて無期懲役にしたのです。

このたびの再審請求では、阪原弘さんを有罪とした根拠の「石原山の金庫投棄現場へ案内した」とする検証調書にある写真が、実は帰路で振り向かせて往路の案内であるかのように装った事実が発覚しました。写真のネガが証拠開示されて判ったのです。この検証調書を作成した警察官が証人として招かれて「良い写真を選んでいたら間違えた。こういう間違いは良くある」と語ったのです。

阪原弘さんは間質性肺炎を患って獄死しました。殺されたのです。無実の人を犯人にした反省も無く、人の命への敬意すらも感じない、この警察官の証言を思いますと、私たちは同じ苦しみを味合された仲間として血が沸き立つような怒りを感じてなりません。被害者にあった背中の死斑は、阪原さんの自白の嘘を語ります。写真ネガと同時に開示された調書では、阪原さんが被害者を殺害したとされる時間以降も生存していた事を示しています。今や、阪原弘さんを犯人、有罪とする証拠や根拠は皆無です。
私たちは、そもそも阪原弘さんを有罪として獄死させ責任は裁判所にもあると考えています。

原審裁判で阪原さんを有罪とするには問題があると考えた裁判官坪井子は、同期司法修習生だった検察官西浦久子に「訴因変更」を促して有罪としました。あのときに無罪としていたならば、阪原弘さんは家族に囲まれた老後を過ごせたのです。獄死することも無かったのです。

私たちは、今回の再審議決定を行った裁判所には敬意を表しますが、これまでに重ねた裁判所の誤りは許しません。今後は、阪原弘さんのご遺族とともに、警察と検察、さらに裁判所の責任を追及して行くつもりです。そして公益の代表とされる検察庁は、これ以上は阪原さんのご遺族に苦しみを背負わせないで、この決定を受け入れて再審裁判に協力するように求めます。(冤罪犠牲者の会)