袴田事件の高裁差し戻しに関する声明

声明

私たち冤罪犠牲者の会は、最高裁判所第3小法廷が行った袴田事件に対する決定に対して、その決定を歓迎はするものの、自らの意思で再審開始決定を行わなかった人権感覚の欠如に対して抗議の意思を表明します。
私たちの会に集う冤罪体験者を通して、私たちは警察と検察が行う証拠捏造や証拠隠しの犯罪的な行為を、余りに多く知っています。知らされています。
袴田巌さんを犯人だとした証拠も、味噌タンクから発見された衣類、その衣類に付着した血痕、郵便局から発見されたとする紙幣など、その総てが捏造です。検察の意思を酌んだ警察による捏造証拠です。
今回の決定で「自判、再審開始」と判断した林景一裁判官と宇賀克也裁判官の所論にあるように、味噌タンクから発見された衣類の変色に関する疑問などは、弁護団から提出された実験証拠によって明らかであるし、一般的な常識でも理解しうる疑問であることを思うと、更に時間を重ねる差戻し判断は、人権救済の砦としての最高裁判所の責任を放棄したものであると抗議せざるを得ません。
今回の決定は法曹出身者3名が「差し戻し判断」をしたのに対して、法曹外から最高裁判事になった2名は「自判、再審開始判断」をしました。
私たちは、この判断の違いこそ、冤罪を生み出す裁判所の問題を示していると考えています。法曹出身の裁判官は警察と検察の行う犯罪行為に無批判すぎます。勇気がなさすぎます。
警察の作る捏造証拠を無責任に看過し、検察官の行う証拠隠しと嘘を無責任に許容する裁判官こそが冤罪を作らせる原因になっていることを知るべきです。
袴田事件では、味噌タンクから発見されたズボンのサイズについて、長く検察は「タグのBはサイズを示す」と嘘を語っていました。しかしのちにBは色を表すことが明らかになりました。また「写真は存在しない」と主張していながら、それも提出されました。
このような虚偽の主張をする検察の対応を、私たちは許しません。警察と検察の行う嘘と犯罪的な証拠捏造に証拠隠しを見逃す裁判官が存在する限り、これからも冤罪は作られます。
今後、最高裁判所は冤罪を主張する裁判では、厳格に警察と検察の行為を判断するように求めます。そして、袴田事件を審理する東京高等裁判所は、速やかに結論を出して、袴田巌さんの被る長い長い冤罪被害から一日も早く救済されるように審理されることを求めます。